アラブが見た十字軍 (ちくま学芸文庫)



アラブが見た十字軍 (ちくま学芸文庫)
アラブが見た十字軍 (ちくま学芸文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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野蛮な西欧、グダグダなイスラム、それは現代も

高校で社会の科目を選択するときにいろいろ悩んだ
倫理は興味ない、政経は自分でできる、日本史は細かい
世界史と地理で迷ったんだけど母者の一言「世界史は今に続いているから」
まさに世界史がそのまま今に続いていると思わざるを得ない本である
この本は西方から蛮族のフランクに蹂躙されるムスリムとその他大勢
そして一枚岩になれないグダグダなイスラムの諸侯たち
レバノンはベイルート出身のジャーナリストである著者が悲惨な戦乱の世を同時代の目で著述していく
実はこの本の本当の論点は最後の章にある
フランクは野蛮ではあったが権力構造や制度面で優れているところもあった
そして西欧はイスラムの優れた科学や文化を学んで吸収していった
攻め込まれたイスラムは西欧の制度を学ぼうとはしなかった
そしてイスラムは西欧に競り負けていくようにあるのであろう
十字軍=DQNというのは世界史を履修していれば常識であろうが
受けて立ったイスラム側の混乱とその後の衰退というのは非常に勉強になった
ベイルート出身の著者からすればレバノンの内戦のグダグダも同じに映ったんだろう
そういう意味では本書は十字軍時代の本でありながら現代の中東情勢の本でもあるのだ
差は歴然・・・

西側の十字軍が1099年7月、エルサレムを陥落させた後、彼らがそこの「聖地」で「何」をしたのかは高校の「世界史」では詳しく学ぶ機会はなかったが、・・・この「アラブ」側から見た本は詳しく教えてくれている・・・非戦闘員である住民を虐殺(7万人以上)ユダヤ人は彼らの教会であるシナゴーグでまとめて焼き殺され、東方教会の宗教的遺物も強奪、司祭も拷問にかけ虐殺・・・彼らの言う所の「聖戦」など微塵も存在しなかった事が良く解る・・・
 翻ってイスラム側からの「ジハード」はどうであったか?1187年10月サラディンにより約100年振りに解放された「聖地」では、フランクであろうが中東の人間であろうが、キリスト教徒に対しては、殺人も略奪も行われなかったという・・・ この事は何を意味するか?私達は良く考えなければならないと思う・・・
歴史書にもファンブックにも

本書はアラブ世界の視点で十字軍の侵攻から後の反攻、
さらにサラディンという歴史的英雄の登場を活写しているわけだが、
これらの推移をふまえつつ現代アラブ世界と欧米諸国の
対立が抱える問題にまで挑戦的に言及しているのは興味深い。

高校の世界史の教科書では、ほんの数ページ、
それもヨーロッパ側の見方でしかない内容だった十字軍史が、
アラブ側から見ることにより、より多面的に、立体的に
当時の人々が何を考えていたのかがよくわかる。

もともとハードカバーで売られていたものだけに、ページ数と値段は結構なボリュームだが、
手に入れる事も至難だった時期を考えれば非常にありがたい。
しかも単なる歴史の羅列を記したものではなく、物語としての表現も軽妙かつ秀逸なので
ちょっと普通の歴史小説は飽きた……という人は大いにのめり込むだろう。

大学で史学を専攻したいと思っている高校生にぜひ薦めたい作品だ。

ちなみに本書は知る人ぞ知る有名なファンタジー小説、
「アルスラーン戦記」の参考資料にも使われており、
ファンなら登場する固有名詞にニヤリとする事も多々ある。
イスラム世界から見た十字軍の時代

中世ヨーロッパ世界による聖地回復のための十字軍。
後のルネサンスから近代への発展へとつながっていく契機ともなった重要な歴史的事件であり、今でも「異教徒との戦い」に「十字軍」の名称が使われるくらい、ヨーロッパの精神史に大きな痕跡を残している。

日本における十字軍の受容はおもに西洋発のものであった。
学校の世界史の授業でも西洋からの視点で十字軍について教えられている。つまり加害者からの視点である。この書は被害者であるイスラム世界側の視点から描かれているという点で興味深い書である。

この書には西洋における十字軍の事情はほとんど語られない。
十字軍の提唱者であるウルバヌス2世の名はほんの一部、他の十字軍に関する書でよく取り上げられるフリードリヒ・バルバロッサやリチャード1世もわずかにしかでこない。この書で登場する西洋人はサンジル・ゴドフロワ・ボエモンといった実際に従軍し、現地に王国を築いた騎士たちの名である。

そして当時の中東情勢のおいて十字軍がどれほどの影響を持っていたかも知ることが出来る。乱立気味の東イスラム世界において十字軍は大きなインパクトであったことは確かだが、イスラム諸侯が一致団結して十字軍と戦うことは殆どない。イスラム諸侯間での集合離散、場合によっては十字軍勢力と結んで他の諸侯と戦う姿はこれまでの十字軍とイスラムの戦いのイメージを覆すものである。

十字軍というとどうもイメージ先行だった嫌いがある。
この書で当時のイスラム世界の情勢というものを知ることが出来た。
ジハードの戦闘的側面は近代において強調されるようになったというが、確かに十字軍時代には宗教的に強い動機を持つジハードが行われたわけではないようだ。

最期に題名の「アラブが見た」というのは内容を正確に表していないように思う。なぜなら、この時代・地域に登場する人々の多くはトルコ人・クルド人といった非アラブのムスリム勢力だからである。
どんな内容?と思う方にはとってもお奨め

 まさに「目からうろこ」の本。
 
 アメリカ主導の対イラク戦争について、ブッシュ大統領をはじめとする米国首脳部が十字軍と同一視した発言を行い大きな不興を買い、また、パウエル国務長官がテレビのインタビューに答える中で「十字軍」と言いかけて口をつぐんだというのが頷ける内容である。特に、フランクによる人肉喰いの描写はすごい。「犬の肉『まで』食べた」なんて表現も。

 記述の内容について、歴史的史実としてどこまで信頼できるのかを批評する能力は私にはない。ただ、アラブ地域の人々の集団的記憶・心情として「十字軍」という言葉にどのようなイメージを抱かれているかが非常によく分かる。「聖地エルサレムの回復」どころか、ひたすらの略奪と殺人。

 私自身の感覚の中でもこれまで抱いてきた十字軍のイメージが大きく変わることになった。単なる個人的な認識不足には過ぎないものの、我が国における「歴史教育」の影響があることは間違いないだろう。



筑摩書房
十字軍―ヨーロッパとイスラム・対立の原点 (「知の再発見」双書 (30))
東ゴート興亡史―東西ローマのはざまにて(中公文庫BIBLIO)
オスマン帝国―イスラム世界の「柔らかい専制」 (講談社現代新書)
オスマンvs.ヨーロッパ―〈トルコの脅威〉とは何だったのか (講談社選書メチエ (237))
十字軍という聖戦―キリスト教世界の解放のための戦い (NHKブックス)




あやし (角川文庫)

あやつられた龍馬―明治維新と英国諜報部、そしてフリーメーソン

あやめ横丁の人々 (講談社文庫)

アラビアの夜の種族 (文芸シリーズ)

アラブが見た十字軍 (ちくま学芸文庫)

アラミスと呼ばれた女

アルデンヌ攻勢 (欧州戦史シリーズ (Vol.9))

アルハンブラ物語〈下〉 (岩波文庫)

アルハンブラ物語〈上〉 (岩波文庫)

アルフレッド大王伝 (中公文庫)




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